FANTASIAN(FANTASIAN Neo Dimension)「混沌の大地 ステージ3/パウリカ研究所」|ミニチュアジオラマ制作・ゲーム空間美術
©MISTWALKER/©SQUARE ENIX
ミニチュアジオラマ制作 × ゲーム空間美術 × 撮影用ジオラマ × FANTASIAN
Apple Arcade向けRPG『FANTASIAN』、およびスクウェア・エニックスより展開された『FANTASIAN Neo Dimension』に登場する“混沌の大地 ステージ3/パウリカ研究所”を、実際の立体セットとして制作したミニチュアジオラマ作品です。
本作は、“混沌の大地 ステージ2”から続くエリアとして、白い大地に赤い血管のようなひび割れが広がり、黒いタール状の液体が流れ、不気味な赤い巨石が点在する混沌の世界をベースに構成しています。そこに新たな要素として、丸・三角・四角の幾何学的なオブジェクトに、蜘蛛のような節足動物を思わせる脚が生えた、人工物とも生命体とも言い切れない“パウリカ研究所”が出現するステージです。
パウリカ研究所は、移動する建物として設定されており、単なる背景オブジェクトではなく、世界観の異常性を象徴する重要な存在として制作しています。実際に動いているように見えるもの、白い大地に飲み込まれ侵食されているもの、ひび割れが起こり、機械そのものが壊れて動けなくなっているものなど、ひとつひとつ異なる状況を持たせることで、ステージ全体に物語性と不穏な生命感を与えています。
ウォルナッツ・クレイワークスタジオでは、ビジュアルデザイン、セット設計、立体造形、ミニチュア小物制作、色彩設計、汚し、塗装、照明、撮影、3Dスキャンまでを一貫して担当。ゲーム内に登場する幻想的で異質な空間を、手仕事による精密なジオラマ造形として成立させた制作事例です。
〈コンセプト〉
“混沌の大地 ステージ3/パウリカ研究所”は、ステージ1、ステージ2から続く白・赤・黒を基調とした混沌の世界に、機械的でありながら生物的でもある新たな要素を加えたエリアです。
白い大地に赤いひび割れが走り、黒いタール状の川が流れる基本構成は前ステージから引き継ぎつつ、ステージ3では、黒い丸・三角・四角の幾何学的な建物が、蜘蛛や節足動物のような脚で大地の上を移動しているような、奇妙で不安定な世界観を立体化しています。
パウリカ研究所は、建築物でありながら、生物のようにも見える存在です。通常の建物のように地面に固定されているのではなく、自ら移動しているような脚を持つことで、人工物と生命体の境界が曖昧になった不気味さを表現しています。現実には存在しない建物でありながら、実物のミニチュアジオラマとして成立させるため、形状・質感・汚し・脚の動きに細かく変化を持たせました。
また、本作では、すべてのパウリカ研究所を同じ状態にするのではなく、白い大地に侵食されているもの、内部の機械が壊れてむき出しになっているもの、脚が動かなくなっているように見えるものなど、個体ごとに異なる状況を設定しています。これにより、混沌の大地が単なる背景ではなく、建物や機械を飲み込み、変質させていく危険な場所であることが伝わるよう設計しています。
さらに、ステージ内に配置した白く化石化した木々によって、生命が失われたような静けさと、長い時間をかけて世界が変質していったような印象を加えています。幾何学的なパウリカ研究所、赤いひび割れ、黒いタールの川、白い枯木が共存することで、ゲーム空間美術としての異質さと奥行きを強めています。
〈造形・素材の特徴〉
大地のベースは発泡スチロールで構成し、高低差をつけながら地形の起伏を制作しています。表面には白い地表表現を施し、乾いた砂のようでもあり、雪や石灰化した大地のようにも見える、無機質で不気味な質感を目指しました。
白い大地には、赤い血管のようなひび割れを加えています。ステージ1、ステージ2から続く混沌の大地の特徴的な表現として、白い地表の内側から赤い異常なエネルギーがにじみ出ているような印象をつくり出しました。黒いタール状の川と組み合わせることで、世界そのものが侵食され、変質しているように見える構成としています。
パウリカ研究所は、丸・三角・四角という幾何学的な形状をベースに制作しています。建物のベースには発泡スチロールを使用し、その上から薄く粘土を貼り込むことで、表面に独特の質感を与えています。さらに、粘土カッターを使って模様をひとつひとつ手描きで刻み込み、人工物としての構造感と、手仕事による細密な造形感を両立させました。
節足動物のような脚は、樹脂粘土で制作しています。脚はすべて同じ形にするのではなく、節ごとに粘土を成形し、1本ずつ違う角度や動きが出るように造形しています。これにより、建物全体が静止しているにもかかわらず、いまにも歩き出しそうな不気味な気配を持つオブジェクトとして成立しています。
三角形のパウリカ研究所には、外装の一部に隙間を設け、内部の機械や管がむき出しになっている表現を加えています。この内部構造も樹脂粘土で1ピースずつ制作し、細かい機械部品や配管を埋め込むことで、単なる表面装飾ではなく、内部に複雑な構造を持つ建物として見えるようにしています。
侵食されているパウリカ研究所には、白い大地から徐々に侵食が広がっているような汚し表現を加えています。化粧パフを使いながら白い汚しをランダムに重ね、グラデーションをつけることで、建物が白い大地に飲み込まれ、変質していく途中の状態を表現しました。塗装による単純な汚れではなく、世界そのものに侵食されているような印象になるよう調整しています。
ステージ内に配置した白い木々は、完全に死んだ木、または化石化した木をイメージして制作しています。樹脂粘土で一本ずつ造形し、木の年輪を感じさせる模様を描き入れています。枝分かれした細いパーツもすべて手作業で制作し、ミリ単位の調整を重ねることで、枯れた木でありながら強い存在感を持つ造形に仕上げています。
本作は、幾何学的な建築物、生物的な脚、機械内部のディテール、侵食表現、白く化石化した木々が組み合わさった、ウォルナッツ・クレイワークスタジオの造形テクニックを代表するミニチュアジオラマ制作事例のひとつです。
〈素材と色彩設計〉
・大地ベース:スチロール造形
・地表表現:白アクリルガッシュ+レジンサンド
・地形の起伏表現:スチロールの高低差による構成
・岩肌加工:スチロールカッターによるランダムな削り出し
・赤いひび割れ:アクリルガッシュ+重曹+レジンサンドによる立体表現
・赤い巨石:軽量粘土
・黒い川:ジェルメディウム+ランプブラックのアクリルガッシュ
・流れの表現:グレーによる描き込み
・パウリカ研究所:スチロール+樹脂粘土
・節足動物のような脚:樹脂粘土による造形
・内部機械・配管:樹脂粘土による細部造形
・白い木々:樹脂粘土による造形
・侵食表現:白い汚し塗装+化粧パフによるグラデーション表現
色彩設計では、前ステージから続く白・赤・黒を基調としながら、パウリカ研究所の人工物としての存在感が際立つように調整しています。白い大地は無機質で死んだような世界を示し、赤いひび割れと巨石は大地内部の異常な脈動や危険性を象徴しています。黒いタール状の川は、重く不気味な流動感を持つ要素として、ステージ全体に不穏な印象を与えています。
漆黒のパウリカ研究所の表面には、白い大地との関係性を持たせながら、建物としての人工的な印象も残るように色を調整しています。侵食されている部分には白い汚しを加え、地表と建物の境界が曖昧になっていくようなグラデーションをつくることで、混沌の大地に飲み込まれていく過程を視覚的に表現しました。
また、白く化石化した木々を配置することで、赤や黒の強い要素だけではなく、静かで乾いた死の気配を加えています。これにより、ステージ全体が単に不気味なだけでなく、時間の経過や世界の崩壊を感じさせるゲーム空間美術として成立するよう構成しています。
〈撮影・照明設計〉
撮影では、白い大地、赤いひび割れ、黒いタール状の川、そしてパウリカ研究所の立体感がしっかりと見えるよう、複数のライトを使って陰影を調整しています。特にパウリカ研究所は、艶出しニスと艶消しニスをオブジェクトに合わせて変更しており、丸・三角・四角という形状と、脚の細かな動き、内部機械のディテールが重要な要素となるため、正面だけでなく角度を変えた撮影にも耐えられるように制作しています。
節足動物のような脚は、細く複雑な形状を持つため、影によって見えなくなりすぎないよう注意しながら、適度な陰影で生物的な不気味さが伝わるようにライティングを設計しました。また、白い木々や侵食された建物の表面に柔らかい影を落とすことで、静かな緊張感のある画づくりを行っています。
3Dスキャン時には、立体情報が正確に取得できるよう、陰影を抑えた安定した照明環境で撮影し、背景美術としての地形構造や造形の情報をデータ化できるよう対応しています。実物のミニチュアジオラマとして制作した造形を、ゲーム背景美術やプロモーション用素材として展開できるよう、撮影・データ化の両面を意識した制作を行いました。
〈担当範囲〉
・ビジュアルデザイン/セット設計
・立体造形
・ミニチュア小物一式造形
・色彩設計・汚し・塗装
・照明設計・撮影・編集
・3Dスキャン・データ化
〈制作情報〉
・ジオラマ名:混沌の大地 ステージ3/パウリカ研究所(FANTASIAN/FANTASIAN Neo Dimensionより)
・セットサイズ:H400 × W700 × D900mm
・制作期間:約1ヶ月
・使用素材:軽量粘土、樹脂粘土、石膏粘土、重曹、スチロール、レジンサンド、モデリングペースト、アクリルガッシュ、ジェルメディウム、LED照明 ほか
・撮影方式:多層ライティング+3Dスキャン対応
・制作年:2021年
本作は、白い大地に赤いひび割れが広がり、黒いタール状の川が流れる“混沌の大地”の世界に、丸・三角・四角の幾何学的な建物と、蜘蛛のような節足動物の脚を持つ“パウリカ研究所”を組み合わせたミニチュアジオラマ制作事例です。人工物でありながら生命体のようにも見える建物、侵食されていく外装、むき出しになった内部機械、白く化石化した木々によって、ゲーム内の異質な世界観を実在する立体セットとして表現しています。
ウォルナッツ・クレイワークスタジオでは、ゲーム・アニメ・キャラクターIP・映像作品に向けたミニチュアジオラマ制作、ゲーム背景美術、撮影用ジオラマ、立体造形、3Dスキャン対応まで一貫して行っています。現実には存在しない建物や異形の世界観を、手仕事による実在感を伴って立体化し、作品世界をより深く印象づける空間美術をご提案します。
- Client
- スクウェア・エニックス, MISTWALKER
- Year
- 2021
- Style
- Diorama
