FANTASIAN(FANTASIAN Neo Dimension)「氷河地帯 入口〜中間地帯」|ミニチュアジオラマ制作・ゲーム空間美術

FANTASIAN(FANTASIAN Neo Dimension)「氷河地帯 入口〜中間地帯」|ミニチュアジオラマ制作・ゲーム空間美術

©MISTWALKER/©SQUARE ENIX

ミニチュアジオラマ制作 × ゲーム空間美術 × 撮影用ジオラマ制作 × FANTASIAN

Apple Arcade向けRPG『FANTASIAN』、およびスクウェア・エニックスより展開された『FANTASIAN Neo Dimension』に登場する“氷河地帯 入口〜中間地帯”を、実際の立体セットとして制作したミニチュアジオラマ作品です。
本作は、ステージ全体が雪と氷に包まれた氷河地帯を表現したゲーム空間美術です。高低差のある岩山、雪が積もった木々、凍結した地表、点在する湖を組み合わせ、静けさの中に生命の気配と危険性が共存する雪原を立体化しています。
『FANTASIAN』のジオラマは、ゲーム内でキャラクターが広いフィールドを縦横に歩き回ることを前提として制作されています。そのため、本作では岩山や湖の一部を移動・交換できる構造とし、同じセットでありながら、カメラの角度やオブジェクトの配置によって異なるステージに見える、自由度の高い撮影用ジオラマとして設計しています。
ウォルナッツ・クレイワークスタジオでは、ビジュアルデザイン、セット設計、立体造形、ミニチュア小物制作、色彩設計、雪や氷の質感表現、照明、撮影、3Dスキャンまでを一貫して担当。大型の実物ジオラマでありながら、ゲーム背景として多様な画面をつくり出せる構造を持たせた制作事例です。

〈コンセプト〉

“氷河地帯 入口〜中間地帯”は、雪に覆われた美しい風景としてではなく、長い年月をかけて岩や木々が凍結し、静かな環境の中に危険な気配が潜んでいる場所として構成しています。
色彩は白を中心としながらも、明るく清潔な雪原にはせず、岩山や木々、湖、陰影にグレーや青を加えることで、全体に冷たく沈んだ印象を持たせています。森の中で雪が降り続いているような閉塞感をつくり、静かな場所でありながら、どこかに生物や敵が潜んでいるような緊張感を表現しました。
本作の大きな特徴は、岩山のレイアウトを変更できる構造です。キャラクターが広い範囲を歩き回るゲームステージとして成立させるため、固定された一方向の背景ではなく、岩山や湖を移動させることで地形の見え方を変えられるよう設計しています。
同じジオラマセットの中でも、岩山の位置、湖の有無、カメラの高さや向きを変えることで、入口、中間地帯、雪原、森の奥など、異なる場所として見える構成としました。実物の造形物を効率的に活用しながら、多数のゲーム画面に対応できる撮影用ミニチュアセットです。

〈造形・素材の特徴〉

雪の表現には重曹を使用しています。ただ白い粉を振りかけるだけではなく、雪が降ってから経過した時間の違いを表現するため、複数の状態に分けて制作しました。
地表に長く残り、完全に氷と化した雪は、重曹にボンドを混ぜて硬く固めています。少し溶けた後に再び凍ったような雪は、重曹とボンドをシャーベット状に混ぜ合わせ、厚みと凹凸を持たせて配置しました。
さらに、最後に茶漉しを使って重曹の粉を上から細かく振りかけることで、つい先ほど降り積もったばかりの柔らかな新雪を表現しています。硬く凍結した雪、湿り気のある雪、降ったばかりの粉雪を重ねることで、雪原に時間の経過と自然な奥行きを与えました。
高低差のある岩山は、発泡スチロールを複数重ねながら大まかな形をつくり、接合部分を粘土でコーティングして一体化しています。岩肌はすべて同じ形にせず、地形や環境に応じて削り方を変えています。
通常の平原にある岩山は、風化によって角が取れたような丸みのある形状としています。一方、氷河地帯の岩山は、寒冷地の厳しい環境を感じさせる、やや鋭利な形状に仕上げました。
さらに、雪解け水や氷河から流れ落ちた水が、何千年もの時間をかけて岩を削ったように見えるよう、岩肌には縦方向の溝を加えています。単なる凹凸ではなく、水の流れや侵食の方向が読み取れる造形にすることで、架空の地形に自然環境としての説得力を持たせています。
ステージの各所に設けた湖は、1ブロック単位で取り外せる構造です。湖を設置した状態と、別の地形ブロックに交換した状態を使い分けることで、同じフィールドの印象を変えられるようにしています。
湖は、凹ませた地形の底面にアルミを貼り、その上に水面として加工した透明のプラスチック板を配置して制作しています。プラスチック板には青をランダムに塗装し、その上からジェルメディウムを重ねて、水面の細かな凹凸や流れを表現しました。
底面の反射と青色の濃淡を組み合わせることで、平面的な水面ではなく、水の深さや透明感を感じられるよう調整しています。見る角度や照明によって反射が変化し、氷河地帯の冷たい湖として見える構造です。
高さ約5cmの木々は、粘土で幹と枝を造形し、葉の部分にはスポンジ素材を使用しています。その上からシャーベット状にした重曹の雪を複数回に分けて積み重ね、枝や葉の上に雪が少しずつ降り積もっていった様子を表現しました。
最後に重曹の粉を上から細かく振りかけることで、現在も雪が降り続いているような新雪の層を加えています。木々の上に異なる状態の雪を何層にも重ねることで、長時間雪にさらされている森の質感をつくり出しました。

〈素材と色彩設計〉

・大地ベース:発泡スチロール造形
・地形の起伏表現:発泡スチロールを積層した高低差構成
・岩山の接合部:粘土によるコーティング
・岩肌加工:環境に応じた丸み、鋭利さ、縦方向の侵食表現
・凍結した雪:重曹+ボンド
・シャーベット状の雪:重曹+ボンドによる立体表現
・降ったばかりの新雪:茶漉しを使用した重曹の散布
・湖の底面:アルミによる反射表現
・湖の水面:透明プラスチック板+青色塗装+ジェルメディウム
・木の幹・枝:粘土による造形
・木の葉:スポンジ素材
・木に積もった雪:重曹+ボンドによる多層表現

色彩設計では、雪と氷を表す白を中心に、岩山、木々、湖、陰影へグレーと青を加えています。明るく美しい雪景色ではなく、日光が届きにくい森の中にある、静かで冷たい氷河地帯を意識しました。
雪の白さを一様にせず、凍結した部分、湿った部分、新しく積もった部分で色と質感に差をつけることで、広い地表が単調に見えないよう調整しています。
湖には青の濃淡と底面の反射を加え、場所によって深さが異なるように見せています。岩山と木々にはグレーを含んだ陰影を加え、雪原の中でも地形や植生の形が読み取れるようにしながら、ステージ全体をグレイッシュな色調に統一しました。

〈撮影・照明設計〉

撮影では、雪山や氷河地帯の冷たさを表現しながら、雪原全体が明るく均一になりすぎないようにライティングを設計しています。
美しい観光地のような雪景色ではなく、森の中に雪が降り続いている、静かで危険な地帯をイメージしました。雪の白さを見せつつ、岩山や木々の間には深い陰影を残し、生命の気配と未知の危険を感じる画面に仕上げています。
全体にはグレイッシュな光を用い、岩肌の縦方向の削り、木々に積もった雪、湖面の凹凸が自然に浮かび上がるよう調整しています。湖は光の当たり方によって反射と色の濃淡が変化するため、青色が強くなりすぎず、冷たい水の深さが伝わる角度を探しながら撮影しました。
岩山や湖は配置を変更できるため、レイアウトごとに光の向きや影の位置も調整しています。同じセットでありながら、異なる場所や時間帯に見えるよう、地形の配置とライティングを組み合わせて複数の画面を制作しました。
3Dスキャン時には、岩肌、積雪、湖、木々の立体情報を取得できるよう、陰影を抑えた安定した照明環境でも撮影しています。

〈担当範囲〉

・ビジュアルデザイン/セット設計
・立体造形
・岩山・雪原・湖・木々の造形
・交換式レイアウトの設計
・色彩設計・汚し・塗装
・照明設計・撮影・編集
・3Dスキャン・データ化

〈制作情報〉

・ジオラマ名:氷河地帯 入口〜中間地帯(FANTASIAN/FANTASIAN Neo Dimensionより)
・セットサイズ:H500 × W900 × D600mm
・仕様:岩山・湖の一部を移動、交換できるレイアウト変更式
・使用素材:発泡スチロール、軽量粘土、樹脂粘土、重曹、ボンド、スポンジ、アルミ、透明プラスチック板、アクリルガッシュ、ジェルメディウム、LED照明 ほか
・撮影方式:多層ライティング+3Dスキャン対応
・制作期間:1ヶ月
・制作年:2021年

本作は、ステージ全体を雪と氷が覆う“氷河地帯 入口〜中間地帯”を、大型のミニチュアジオラマとして立体化した制作事例です。
硬く凍結した雪、シャーベット状の雪、降ったばかりの新雪を重曹によって作り分け、高低差のある岩山、雪が積もった木々、深さを感じさせる湖を組み合わせることで、長い時間雪が降り続いてきた氷河地帯の環境を表現しています。
また、岩山や湖の一部を移動・交換できる構造とすることで、同じ大型セットから複数の地形や画面をつくり出せる、自由度の高い撮影用ジオラマとして設計しています。
ウォルナッツ・クレイワークスタジオでは、ゲーム・アニメ・キャラクターIP・映像作品に向けたミニチュアジオラマ制作、撮影用ジオラマ制作、ゲーム背景美術、ミニチュアセット制作、交換式セット設計、照明、撮影、3Dスキャン対応まで一貫して行っています。
物語の舞台となる広いフィールドや、実在しない自然環境を、手仕事による質感と撮影の自由度を備えた立体空間としてご提案します。

Client
スクウェア・エニックス, MISTWALKER
Year
2021
Style
Diorama, Video Game

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