【ジオラマ制作/クレイアート】
FANTASIAN(FANTASIAN Neo Dimension)混沌の大地ステージ1|ゲーム空間美術
©MISTWALKER/©SQUARE ENIX
クレイアート × ミニチュアジオラマ × ファンタジー美術 × ゲーム背景造形
Apple Arcade向けRPG『FANTASIAN』、およびスクウェア・エニックスより展開された『FANTASIAN Neo Dimension』に登場する“混沌の大地 ステージ1”を、実際の立体セットとして制作したミニチュアジオラマ作品です。
本作は、現実世界には存在しない異形の地形をテーマに、白い砂や雪を思わせる大地の上に、血管のように張り巡らされた赤いひび割れ、黒いタールのような川、不気味な赤い巨石、そして黒くねじれる植物が広がる、混沌そのものを立体化したゲーム空間美術です。自然物とも人工物とも断定できない不穏な造形によって、静止した地形でありながら、どこか生物的で危険な気配を感じさせるステージとして構成しています。
ウォルナッツ・クレイワークスタジオでは、ビジュアルデザイン、立体造形、素材設計、塗装、撮影までを一貫して担当。既存の自然表現に寄せるのではなく、ゲーム世界ならではの異質な質感と色彩を、手仕事によるミニチュアジオラマとして成立させた制作事例です。
〈コンセプト〉
“混沌の大地 ステージ1”は、白く乾いた大地の中に、内部から何かが滲み出しているような不気味さを持つ空間として設計しました。白い地表のあちこちには赤いひび割れが走り、その奥から血液のような赤がにじみ出ることで、ただ荒廃した大地ではなく、内側に異常なエネルギーや生命の痕跡を宿した場所として見えるよう構成しています。
そこに、行く手を阻むように突き出す赤い巨石、タールのように重く流れる黒い川、そしてかろうじて生命を感じさせる黒い植物を配置することで、世界全体に張りつめた緊張感を持たせました。生命が絶えたように見えながら、別の異質な何かが脈動している――そんな矛盾した印象を、色彩と造形の両方で表現しています。
本作は、現実の風景を縮小して再現するジオラマではなく、現実にはあり得ない混沌のビジュアルを、立体として説得力を持たせながら成立させることを目的に制作しています。白、赤、黒という強い色の対比を軸に、ゲーム空間としての不気味さと印象の強さを両立させたステージです。
〈造形・素材の特徴〉
白い砂や雪を思わせる大地は、スチロールをベースに制作しています。地面全体に起伏を持たせるため、ベースとなるスチロールの高さを変えながら構成し、単調な平面ではなく、フィールドとしての立体感が伝わるよう設計しました。表面には、白のアクリルガッシュにレジンサンドを混ぜたペーストを広げて固めることで、乾いた白い地表の質感を表現しています。粉っぽさとざらつきを持ったこの表面によって、雪のようでもあり、白い砂のようでもある曖昧な地質感をつくり出しています。
削り取られた岩肌は、スチロールカッターを使って自然物のようにランダムにカットしています。人工的に整いすぎた面ではなく、侵食や崩落によって削られたような不規則さを加えることで、異形の大地に自然な説得力を与えています。
本作の象徴ともいえる赤いひび割れは、まず地表にアクリルガッシュで赤を塗装し、その上から重曹、アクリルガッシュ、レジンサンドを混ぜ込んだペーストを粘土へらで少しずつ埋めるように重ねて制作しています。表面を完全には覆わず、塗り残した隙間から赤がのぞく構造とすることで、大地の内部に血管のような赤い脈が張り巡らされているような印象を表現しました。単なる表面の模様ではなく、地中から何かが滲み出しているような不穏な立体感が生まれています。
行く手を阻むように立つ赤い巨石は、軽量粘土で制作しています。巨石はすべて形を変え、一つとして同じ表情にならないように造形しました。表面にはクレーターのような跡を加えたり、生物を思わせる爪のような造形を忍ばせたりすることで、単なる岩ではなく、どこか生き物にも見える不気味な存在として仕上げています。自然物とも人工物とも断言できない曖昧な造形にすることで、混沌の大地にふさわしい異様さを持たせています。
黒いタールのような川は、ジェルメディウムとランプブラックのアクリルガッシュを使って制作しています。まず漆黒の液体として塗り広げ、その上からグレーを爪楊枝で引いて流れを描くことで、重く粘度の高い液体がゆっくりと流れているような視覚表現を加えています。完全な静止ではなく、“どろりとしながら流れている”ことが伝わるようにしており、見る側に危険な液体という印象を与える設計です。
わずかに生命を感じさせる黒い植物は、すべて樹脂粘土で制作しています。一本一本を紐状に成形し、それらを重ね合わせながらランダムに動きをつけることで、黒い血管が集まり、互いに寄り添うように天へ向かって伸びていくような植物表現に仕上げました。木のようでもあり、蔦のようでもあり、生命体の器官のようにも見える造形にすることで、ステージ全体の不気味な有機性を強めています。
〈素材と色彩設計〉
・大地ベース:スチロール造形
・地表表現:白アクリルガッシュ+レジンサンド
・地形の起伏表現:スチロールの高低差による構成
・岩肌加工:スチロールカッターによるランダムな削り出し
・赤いひび割れ:アクリルガッシュ+重曹+レジンサンドによる立体表現
・赤い巨石:軽量粘土
・黒い川:ジェルメディウム+ランプブラックのアクリルガッシュ
・流れの表現:グレーによる描き込み
・黒い植物:樹脂粘土による造形
色彩設計では、白・赤・黒の3色を軸に、混沌の世界観を強く印象づけています。白い大地は静止した無機質な地表、赤は内部からにじみ出る異常な脈動、黒は死と粘度を感じる不穏な存在として機能しています。色数を絞ることで、一つひとつの造形要素がより強く際立ち、ゲーム空間としての異様さが視覚的に伝わるように構成しました。
特に白地に赤がにじむ表現は、単なる配色ではなく、大地そのものが変質しているような印象を持たせる重要な要素となっています。また、黒い川と黒い植物によって、地面から立ち上がる気配や危険な流動感を補強し、平面的ではない“生きた混沌”として空間を成立させています。
〈撮影・照明設計〉
撮影では、上方から柔らかなライトを落とし、地形全体の白い大地の印象を損なわないようにしながら、補助ライトで陰影を加えています。これにより、スチロールによる起伏、赤いひび割れ、巨石、黒い植物の立体感が自然に浮かび上がるよう調整しています。
照明は、白い大地と赤いひび割れのコントラストがしっかり見えるように設計し、あえて白と赤が印象的に際立つバランスに整えています。過度に暗くせず、全体の構造を見せながらも、巨石や黒い川、植物の影によって不穏なシルエットが出るようにし、混沌の大地らしい静かな緊張感を画面に持たせました。
〈担当範囲〉
・ビジュアルデザイン/セット設計
・立体造形
・ミニチュア小物一式造形
・色彩設計・汚し・塗装
・照明設計・撮影・編集
・3Dスキャン・データ化
〈制作情報〉
・ジオラマ名:混沌の大地ステージ1(FANTASIAN/FANTASIAN Neo Dimensionより)
・セットサイズ:H300 × W600 × D900mm
・制作期間:約1ヶ月
・使用素材:軽量粘土、樹脂粘土、石膏粘土、重曹、スチロール、レジンサンド、モデリングペースト、アクリルガッシュ、ジェルメディウム、LED照明 ほか
・撮影方式:多層ライティング+3Dスキャン対応
・制作年:2021年
本作は、白い大地、血管のように張り巡らされた赤いひび割れ、黒いタールの川、不気味な赤い巨石、そして血管のように絡み合う黒い植物によって、現実には存在しない“混沌のカオス”を立体化したミニチュアジオラマ制作事例です。自然物とも人工物とも言い切れない異形の造形を、素材選定と手仕事による精密な造形で積み重ねることで、ゲーム内のラストエリアにふさわしい強い印象を持つ背景空間として仕上げています。
ウォルナッツ・クレイワークスタジオでは、ゲーム・アニメ・キャラクターIP・映像作品に向けたミニチュアジオラマ制作、背景美術、立体造形、撮影用セット制作に一貫して対応しています。現実には存在しない地形や素材感、物語性を持つ空間まで、手づくりならではの実在感を伴って立体化し、世界観を深く印象づける背景美術をご提案します。
- Client
- スクウェア・エニックス, MISTWALKER
- Year
- 2021
- Style
- Diorama
